Jess Hornさんのこと②

そんなことがあってから、私は時々Jessさんにメールさせていただくようになりました。
40周年記念モデルについては「キャンセルリストに名前を載せておくよ」とのことだったのですが、多分社交辞令で言われているのだろうなあと思っていましたし、リアルタイムではとても手に入れられそうな雰囲気はありませんでした。
やり取りの中で逆にJessさんから質問が来ることもあり、中には結構直球な質問もあったのですが、私も取り繕うことなく思ったことをそのまま答えていました。

そんな頃、当時のナイフマガジンにJessさんのナイフの特集記事があり、ご本人に聞いてみると手元にないということだったので、一冊プレゼントすることにしました。ご本人の感想も聞いてみたかったのです。
海外と取引しているとつくづく日本のEMSは安くて優秀だと思うのですが(アメリカに着いてからはUSPSにバトンタッチですがおそらくPriority Mail扱いだと思います)、本当に1週間ほどで届いていました。
ただ、今はコロナの影響でもっと日にちがかかってしまうのかもしれません。

記事は気に入られたようで、older modelも載っているし写真がgood job!と言われていました。
確かその記事にJessさんの作業場の写真があり、中に某有名防錆オイルの缶が小さく写っていました。
私はJessさんにメンテナンスにはそのオイルを使っているのですか?と聞いたのですが、答えはNoでした。
「〇〇-〇〇は絶対ナイフに使ってはだめ、ハンドル材に悪いから。あのオイルは工具用」とのことでした。
おそらくどこの雑誌も聞いたことがなかったと思うのですが、私はJessさんに「フォールディングナイフの手入れにはどんなオイルがベストなのですか?」と聞いてみました。
答えは「高級モーターオイル。つまようじに取ってそれを金属の擦り合わせ部分に塗るといいよ。余ったオイルはしっかりふき取ること、モーターオイルでもやっぱりハンドルにダメージがあるかもしれないからね」というものでした。
Jessさんは防錆オイルがハンドルに与える影響を、いつも気にされていました。

また当時Jessさんは各モデルの写真を載せたサイトを持たれていたのですが、「せっかくなのでJess Horn Knife Bookみたいな本を出されてはどうですか?」と聞いたこともあります。
答えは「それもおもしろいかもしれないけどすごく時間を取ることになるだろうし、自分はやっぱりナイフをデザインしたり作っている方が好きだからね」ということでした。

その頃ホーン夫妻は結婚されてちょうど50周年を迎えられるということで、記念にご夫婦での旅行を計画されていました。
長いバケーションを取って、4~5週間かけて家族を尋ねたり、いろいろなところに行くつもりなんだ、と言われていました。
元々ご夫婦の仲が良いと聞いていましたが、Jessさんのメールを読んでいると本当にそうなんだなとすごく納得したものでした。