Jess Hornさんのこと①

Jessさん(このブログではあえてJessさんと呼ばせていただきます)のナイフを初めて買ったのは1990年代の初め頃でした。
その後何本かのナイフを買ったり手放したりして、結局今は特に気に入った5本だけが手元に残っています。

ナイフに興味を持ち始めた当初、私はどちらかというとシースナイフが好きで、なにかとアクションに問題が出そうなフォールディングナイフには今一つ購入意欲がわきませんでした。
一方、私の父もナイフに興味があったのですがこちらはフォールディングナイフ好きで、「お金があったらどれを買うか」という話になると私はシースナイフ、父はフォールディングナイフで、当時出ていたジム・ウェイヤー氏の写真集等を眺めながら、あれが良いこれが良いとやっていました。
その後私が初めて買ったフォールディングナイフがJessさんの作品だったのは、そんな父に見せびらかしたかった(笑)気持ちもあったと思います。
一人暮らしをしていた私が実家に持って帰ったホーン・ナイフをアクションがすごいとかやっぱり雰囲気がとかあれこれ言いながら二人して眺めていたのは、今では良い思い出です。

さて、そんなJessさんがナイフメイキング40周年記念の限定ナイフを出すと知ったのは2007年のことだったと思います。
経緯は忘れましたが、何かと一緒に40周年記念ナイフの写真が入ったJessさんの名刺をたまたま手に入れて、そんなナイフが出るんだ!ということを知りました。
そうなるともう居ても立ってもいられません。
考える時間を取りながらやり取りできる読み書きならまだしも、聞き取りも話すこともろくにできないのに、それでも私はJessさんに電話してみようと決心しました。
住所から時間を調べて、普通に起きていらっしゃるであろう時間に、どきどきしながら電話したことを覚えています。
ブーーーッ、ブーーーッというなんだかいかにも外国らしいコール音が鳴った後、男性が出ました。
どうやらご本人が出られたのですが、「ジェス・ホーンは私だよ」と返事されたこと以外ほとんど何を言われているのかほとんど聞き取れません。
「ぷりーずすぴーくもあすろーりー?」作戦で、ぐだぐだながらも会話(?)を進め、どうやら販売する40本はすべて予約済かショー用で直接買えるものはもうないこと、今後もし何かあったらメールくれてもいいよ、と言われていることがわかりました。
細かなやりとりはメールの方が断然楽なので、さんきゅー!と返したものの、続けて教えてくれているメールアドレスがまともに聞き取れません。
「アーリン」
「…そーりー?」
「アー リン」
「……そーりー?」
ひどいものです。
そのうち一語一語教えてくれました。
「E」
「いー」
「A」
「えい」
「R」
「あーる」
…聞き書きして結局earthlinkだとわかりました。何回聞いても、私には「アーリン」としか聞こえませんでした。
色々確認させていただいて、お礼を言って、私は電話を切りました。
40周年モデルもう買えないのか…がっかりでした。まあ40本だからがんばってお金貯めて網を張ってればどこかで買えるかな、でも良いシリアルナンバーはコレクター同士でやり取りするだろうから市場には出にくいだろうな…等と考えていました。

その時にはまさか、ここからJessさんと何年もの間長いやり取りが続くことになるとは思いもしませんでした。